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浮かび上がったのが、格付けの仕組みを新しい自己資本比率規制(パーゼルE) の基礎に据えることだった。 パーゼルIは民間企業向け与信には差を付けず、リスク量を算出するためのリスクの掛け目を一律100%とした。
つまり、融資額の100%をリスク量と認定した。 ところが実際のリスクは証券取引所に上場されている超優良企業と、町や村の零細企業とで異なる。
それを一律と位置付けるパーゼルIは不十分だとして、貸出先の信用力に応じたリスク掛け目を設け、その信用力判定の基礎に格付けを据えた。 具体的には、格付けに応じてリスク掛け目を変えた。
パーゼルIで一律100%だったリスク掛け目を、パーゼルEで4段階に分けた。 トリプルA向けはリスク掛け目をとし、そこから格付けが低くなれば掛け目は、さらに低くなれば100%、不良債権などには150%とした。
トリプルAの企業向けの1000億円の貸し出しがあった場合、パーゼルーではリスク量は1000億円だが、パーゼルEでは200億円に減った。 一方で破続懸念先の企業向けの1000億円の貸し出しは、パーゼルIでのリスク量は1000億円だがパーゼルEでは1500億円となった。
銀行の経営を左右する根幹を、格付けが握った。 パーセルIが格付けを基礎に据えたことは、格付けにお墨付きを与えたようなもので、従来より幅広い投資家が格付けを利用するようになった。

SECが暴いた格付けの闇格付け万能の流れを一気に変えたのが、サブプライムローン問題だった。 普通の投資家にはわかりにくい証券化商品の爆発的な普及を支えたのは、リスクをわかりやすい記号で表示する格付けだった。
その証券化商品に欠陥があることが明らかになって証券化商品の価格が暴落するが、それはとりもなおさず格付けに欠陥があることにほかならなかった。 サブプライムローン問題は格付け問題でもあった。
S&PやMは2007年央に、サブプライムローンを裏付け資産にしたRMBSを格下げした。 その理由について「時系列(ヒストリカル)の前例や、われわれの従来の前提を超えて大幅に損失が発生した」と説明したが、格下げは、格付けの根幹に絡む重大な問題をはらんでいた。
ひとつは格付けモデルの欠陥である。 格付けを与える際には、将来の損失予測のもとになる時系列の損失発生率が重要になる。
時系列の損失データがカバーする期間は、好況期や不況期をまたいだものでないと正確な損失予測は難しい。 ところが格付け会社は、おおむね好況期だけのデータをもとに時系列の損失発生率をはじいていた。
米国では1992年以降、長期の経済成長が続いており、格付けはその成長が永続する前提で付けられていた。 リスク分散の評価も甘かった。

米国では東海岸と西海岸の経済循環の型が違うので、証券化商品の裏付け資産に東海岸での住宅ローンと西海岸の住宅ローンが組み込まれていると、リスクは分散されるとしていた。 しかし実際には住宅価格は全米で下落し、東海岸と西海岸の分散は意味をなさなかった。
もうひとつは、格付け会社の利益相反だ。 カリフォルニア州などで住宅価格が下がり始めたのは○年夏からなのに、格下げはそれから約1年後に実施された。
格付け会社は、その一部について「○年○月からクレジット・ウオッチ(格付けの見直し)にして実質的に行動してきた」(S&P)と主張した。 しかし、格付け会社が格付け対象から手数料をもらっていることもあって、格下げには消極的でタイミングが遅れたのではないかと疑われた。
投資家などの陳情を受け、議会で格付け会社への批判が噴出した。 上院議員が「サブプライムローン問題で格付け会社が重大な役割を演じた」と批判し、公聴会が何度も開かれた。
こうした格付け批判を受けて、米証券取引委員会(SEC)が町年8月から格付け会社の調査に乗り出し、7月にその調査結果を発表した。 それは、格付け会社の閣を暴く衝撃的な内容だった。
それによると、CDOの格付けが急増した。 しかし3大格付け会社(S&P、M、F・R)のうち、2社で担当スタッフの増員が追いつかなかった。
SECの調査で、「スタッフの問題(不足)で手数料に見合った格付けの価値を提供できていない」とする社内メールが見つかっている。 格付け会社は自ら付けた格付けを変更するため、付けた格付けの監視が必要になる。
しかし一部の格付け会社は、監視のための人員や手続きが不十分だった。 この事実は、最も利益の上がる新規の格付けに熱心になり、収益性が低い監視には力を入れていないことを意味する。
格付け会社は、格付け先企業から格付け手数料をもらう利益相反を抱えている。 にもかかわらずある格付け会社は、シニアの格付けアナリストを顧客との手数料交渉に参加させていた。
RMBSやCDOの格付けは複雑で、格付け手順を記した書類整備が欠かせない。 しかし、どの格付け会社もRMBSとCDOについては特別に明記した格付け手順を用意していなかった。

SECが明らかにしたのは、資本市場が信用していた格付け会社は欠陥だらけだったという現実だ。 収益優先の格付け会社に本当に格付けがまかせられるのかという投資家の疑念は、怒りに変わった。
落ちた信用を回復する試みが始まった。 Mは2008年9月に「分析の質と透明性の強化」と題するリポートを発表。
その中で格付け分析の信頼性の強化、格付けプロセスの透明性の向上、潜在的な利益相反に対処するための措置の強化、などに取り組んでいると強調した。 具体的には、格付けで使うモデルの精度向上、格付けをしたあとの変更を監視するアナリストの増員、格付けアナリストによる推奨や助言の禁止、手数料に関する会議へのアナリストの出席禁止、格付け業務と非格付け業務の法律上の分離、などを打ち出した。
最近の取り組みとしてあげたのは、利益相反を防ぐ措置の強化など6部門担項目にわたった。 格付け会社は自己改革への熱意を強調しようとしたが、逆にそれだけ問題が根深かったことを浮き彫りになった。
市場では、脱格付けの動きが広がり始めている。 格付けが信用できないことを前提にした取引、CDSである。

社債などでデフォルトが発生したときに、その元本の支払いを肩代わりする相対契約である。 社債の発行者とは関係のない金融機関が、その契約(プロテクションと呼ばれる)を社債を保有する投資家に売り、投資家はそれを買うことによって社債の信用リスクを回避できる。
従来、投資家は、投資勘定については格付けを活用することによって信用リスクの管理をしていた。 例えば運用資金をトリプルAが○%、ダブルAが○%、シングルAが○%、トリプルB○%、ダブルBが○%に配分するなどし、景気の動向に応じてその配分を変えながら、貸し倒れの回避と利益の極大化をめざしていた。
そうした運用手法が有効に機能するためには、格付けが景気変動などに応じて機動的に変更される必要がある。 ところが投資家は、格付け会社が期待通りに機動的な格付け見直しをしなかったり、一部の銘柄については政治的な配慮がなされたりしていると、疑ったのだ。
加えて証券化商品について格付け会社は、サブプライムローンが裏付け資産になっているにもかかわらず、7割近くにトリプルAの格付けを付けた。

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